インターネットによって情報が容易に国境を超えて流出・流入するようになっている。特にクラウドサービス(第7回 https://ai-contract-review.org/column/1067/)の利用によって、知らないうちに外国のサーバーに日本の情報が保存されることも増えている。
このような状況においては、例えば外国政府が当該外国のサーバー上の日本企業の情報を取得するガバメントアクセスや、外国政府がその国で行われた犯罪捜査のため、その国の犯人が管理する日本のサーバ上の情報にアクセスして捜索等を行う越境捜索の問題がますます重要になっている。
筆者は既に、情報通信政策研究において「中国の個人情報保護法とデータ運用に関する法制度の論点」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jicp/5/2/5_29/_pdf/-char/ja)を公刊し、また、比較法研究においても「中国における個人情報保護に関する法制度ー監視に関する点にフォーカスして」を公刊しているが、この度このテーマについて新たに二つの論考を公刊することになった。
まずは板倉陽一郎編著『越境するデータと法』(https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-04287-3)であり、「中国-データ主権原則と越境捜索」を共著させて頂いた。その中で中国の採用する4種類の越境捜索の手法とそれぞれが国際的な越境捜索の原則に適合しているか等を論じた。
次が情報法制研究であり、「中国のガバメント・アクセス ~プラットフォームを中心として~」という共著論文を公刊させて頂くことになった。
これらはいずれも、中国政府が主にネットワークを通じていかに外国サーバに保存されたものを含む情報を取得するかを論じたものであり、日本の企業にとって関心が高いものと思われる。
とは言え中国は例えば新国連サイバー犯罪条約を含むこの点の国際ルールメイキングに参加しており、今後の動向に引き続き注目すべきである。